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PIOの新ブログ

書籍・雑誌

2017年4月11日 (火)

『ミュシャのすべて』

Musa 堺 アルフォンス ミュシャ館(堺市立文化館)協力
『ミュシャのすべて』 角川新書 2016

先日の「スラヴ叙事詩」鑑賞(→)を機に、借りてみました。
この本、優秀です。
カラー写真多数。持ち運び至便。

総論 ミュシャ芸術の本質――祖国を愛した時代の寵児
1.パリでの飛躍 挿絵画家からポスター画家へ
2.アール・ヌーヴォーの旗手として ポスター画黄金期
3.祖国のために アメリカからチェコへ
4.スラヴ叙事詩 祖国への祈り

この目次だけを見ても、ミュシャの一生がわかるというもの。
さらに、巻末には年表も。これまたカラーページです。
年表――ミュシャの生涯と作品

女優、サラ・ベルナールと契約していたのが1895-1901年(35-41歳)。
1900年のパリ万博では、ボスニア・ヘルツェゴビナ館の装飾も担当。
1904年にアメリカで富豪のパトロンを得て、1910年にプラハに戻る。
こういう経歴を見てみると、
ポスター画家で名を馳せたパリ時代って、結構短くてびっくり。
乙女チックなポスター画家、といった謝った認識を改めた私です。

2017年4月 7日 (金)

『孤独な祝祭 佐々木忠次』

Sasaki_2追分日出子

『孤独な祝祭 佐々木忠次 バレエとオペラで世界と闘った日本人』
文芸春秋 2016


バレエにもオペラにも疎い私、
インプレサリオ(興行師)という言葉も知らず、
ミラノ・スカラ座招聘にかかった年数(16年!)、
オペラの引っ越し公演の大変さ(ステージの造りがそもそも違う!)
等々、初めて知ることばかりでした。

また、日本が西欧文化に親しんでいく経緯と、
昭和人間の私自身の歴史とをリンクさせて読める点もおもしろかったです。
例えば、1933年生まれの佐々木氏の節目となったという1961年(私が生まれる前の年)
は、ジョン・F・ケネディの米大統領就任、ソ連のガガーリン宇宙飛行、
ベルリンの壁建設の年にして、日本では「所得倍増計画」発表の年であり、
上野の東京文化会館が完成した年。
1983年(私は大学在学中)は、蜷川幸雄演出「王女メディア」の初の海外公演で
能や歌舞伎以外の舞台芸術の海外発信開始年であり、
ベジャールが初めて東京バレエ団に振付指導をした年
(ベジャール作、忠臣蔵を元にしたオリジナル・バレエ「ザ・カブキ」として結実)。
ベジャールも、一昨年のジルベスタ・コンサートで引退の「ボレロ」を披露したギエムも、
佐々木氏の力で日本との関係を深めたのですね。

東京バレエ団が「世界五大バレエ団の一つ」と言われるほどの地位にあること、
そうなるために赤字覚悟の欧州公演を何度も経てきたこと、
日本人の特質を生かそうと統一のとれたコール・ド・バレエ(群舞)に力を入れて
評判を博したこと等々、なるほど~と思うことがたくさん。

舞台芸術に理解を示さない日本政府、外務省(大使館)に対する怒りにも納得。
佐々木氏の生き方そのものが日本社会の特質をあぶり出しているように思えました。

2017年3月31日 (金)

警察小説まとめ読み

堂場瞬一

『消失者 アナザーフェイス4』 文春文庫 2012
『凍る炎 アナザーフェイス5』 文春文庫 2013
『高速の罠 アナザーフェイス6』 文春文庫 2015
『警視庁追跡捜査係 刑事の絆』 角川春樹事務所 2013

現実逃避行動に走っている私です。
春休みも残すところ、あと1週間弱。

アナザーフェイスのシリーズは、
凄腕イケメン警官が、愛妻の没後、
一人息子の子育てと警官業の両立を目指し…という設定なのですが、
その彼と義理の母君との奮闘ぶりと、
現実のわが身との差異が、つくづく、大きく大きくのしかかり、
わが子育ての失敗ぶり、情けなさが身に沁みました。
今の時代を映す企業の裏
(黒い送金隠し、新エネルギー技術の国際争奪戦、超過勤務隠し、…)
を扱うアナザーフェイスのシリーズに、
その主人公を襲った犯人逮捕に向けて仲間が一丸となる追跡捜査係シリーズ。
ストーリーの微妙な被らせ方、うまいです。

人生、人間同士の信頼関係だよなあ…と痛感しました。
そんななか、私はというと
とある人から突き付けられた鋭い指摘が、この1か月、胸に刺さったまま。
「何でも先走って押し付けるあなたの傲慢さが、心優しい息子さんの心を壊した」

その息子、ついに本日で学生の身分を自ら返上。

2017年3月 2日 (木)

『エイジハラスメント』

Uchidate2015 内館牧子 『エイジハラスメント』 幻冬舎文庫 2015

内館さんの新刊が借りられなかったので、
代わりにこちらを借りてみました。
アンチ・エイジングに走る、美貌の30代妻・蜜を主人公とする小説です。

ストーリー自体は、ステレオタイプ的な展開で、
さほど新しさはありません。

これは、啓蒙小説ですね。
こういう分野が今もあったか!といった感想を持ちました。
そういう意味では、よくできているかも。

印象に残ったフレーズを書き留めておきます。

*夫婦であれ子供であれ恋人であれ、他人の気持はコントロールできない。コントロールできないことに対しては心を砕かない。それが、人生を明るく楽にさせるのではないか。それが蜜が到達した地点だった。(p.274)

*「若さ」を失えば認められない。若さを失った後も楽しく堂々と生きるには、自分の足で立っていられることが必要だ。誰かの、何かの、役に立っているという自負だ。(p.282)

2017年2月19日 (日)

『春に散る』

20170219 沢木耕太郎 『春に散る』 朝日新聞社 2016

上質の娯楽小説でした。
朝日新聞の連載小説ですが、連載当時は全く読んでおらず。

40年ぶりにアメリカから帰国した元ボクサーが
昔の仲間を集め、4人で協力して有望な青年を育てる。
……乱暴にまとめてしまえば、そういう物語です。

なんとも都合よく物事が運びすぎるストーリー運び、
(実に見事なタイミングで、人や住家に恵まれる)
結末が見えてしまうタイトルが、ちょっと興ざめかもしれませんが、
楽しんで一気に読めてしまいます。
上下2巻、あっという間でした。

個人的には、、
亡きボクシングジムの会長が、入寮テストとして課したという
「ヘミングウェイの小説の感想文」
というのが、印象に残りました。(私自身の仕事柄sweat01
八百長試合に臨む二人のボクサーを描いた小説を読んで、

・ファイト・マネーに着目する
・負けたボクサーのその後に思いを馳せる
・あとがきの解釈に異を唱える
・ボクシングと野球の差への気づきを述べる

と、四人それぞれが全く異なる視点をとった、というところ。
「期待される答えを書く」
のではない感想文、これがあるべき姿だなあ。。。
これが、この小説冒頭の「キューバが見たい」につながっていたのだった
と、今、気づきました。洒落た仕掛けです。

主人公が心惹かれたという映画(引退した音楽家たちの共同生活ハウス)、
私も予告編で見て心惹かれており、共感しました。

ボクシングについての知識がなくても、それぞれの視点で楽しめる小説だと思います。



2017年2月17日 (金)

『いまさら翼といわれても』

20170217 米澤 穂信 『いまさら翼といわれても』 KADOKAWA 2016

米澤穂信の作品は、
古典部シリーズの『氷菓』を読んだのが初めてで、
ものすご~く前だったなあ。。。という記憶が。
このブログにも書いていないから、2005年より前??
なんて思ってググってみたら、2001年発行でした。

当時は、
ふつーの学生~古典部の部員~が、日々の小さな謎の解明に挑む、
だれも死なない、警察とは無縁の気軽に読める明るいストーリー
というのが目新しく感じたのでしたが、いまや一つの流派になった感あり。

前置きが長くなりました。
本書『いまさら翼といわれても』、その古典部シリーズの最新作。

将来を見据える、自分を見つめ直す、
という視点で、大人への脱皮の予感を感じたのは、
以前の作品が半ば忘却の彼方となり、バイアスがかかったせいかもしれません。

高校生同士の、ある意味、密な、また、ある意味、醒めた人間関係、
うまく描いているなあと思いました。

生徒会の選挙を巡る「箱の中の欠落」
中学の卒業制作を巡る「鏡には映らない」
教師の思い出を巡る「連峰は晴れているか」
漫画部の内紛を巡る「わたしたちの伝説の一冊」
主人公ホータローの過去を巡る「長い休日」
そして表題作「いまさら翼と言われても」

やはり表題作が、一番心に響きました。

2017年2月12日 (日)

『日々の光』

20170212 ジェイ・ルービン著(柴田元幸・平塚隼介訳)
『日々の光』 新潮社 2015

村上春樹や芥川龍之介の作品の英訳者として知られる
ジェイ・ルービン氏による長編小説です。

戦前のシアトルで日系人に布教をはかる白人牧師が、
日本の中国占領、そして真珠湾攻撃に至るという戦況によって
態度を変化させていく様子は、ショッキングではありますが
理解できることに感じました。

こうして、日系人への逆風が吹き荒れる世論の中、
在米の日系人たちが、どのような処遇を受けたのか。
どのような経緯で移送され、
砂漠地帯の中の強制収容所での生活が、どのようなものだったのか。。。

これは、本当に衝撃的でした。
最終的なゴールとしてのガス室送りこそなかったものの、
実態は、ヒトラー政権下のユダヤ人収容所と同様なものだ、といった記述もあったかと。
このあたりは、読んでいて辛くなります。

ただ、本作の主眼は、ここではありません。
主人公は、冒頭の牧師の息子、ビリー・モートン。
彼が、幼少時に「ミツ」と呼んで慕っていた女性は、いったい誰なのか。。。

いわゆる「母」探しの中で、
彼自身の手で、米社会の中の「日本」を見出し、居場所とし、
フルブライト留学の大学院生として来日。
終戦後もアメリカに対する暗い感情を抱く日本人も含め、
さまざまな日本人と交流するなかで、日本への理解を深めていきます。

少年ビリー、青年ビリーの目を通して書かれる現実と
戦前、戦中の描写が行き来する構成の本書は、
冒頭からスリリング。
そして、ついに。。。

昭和30年代の女性の振る舞い、父親の威厳、等々
ああ、こういう時代だったな……と、改めて気づかされました。

まさに大河ドラマ。
これを1980年代に書いたというルービン氏に脱帽です。

2017年2月10日 (金)

『静かな雨』

20170210 宮下奈都 『静かな雨』 文藝春秋 2016

宮下奈都の本、
いままでに6冊以上読んでいるのですが、
この本は、このほかの作品とはちょっと趣が異なるように感じました。

小川洋子や川上弘美を思わせるような、一種の静謐感が。

私としては、
いつもの軽妙洒脱さが感じられる作風の方が好みだなあ
新機軸を目指したのかあ
と思ったのですが、さにあらず。

本作が「著者の原点にして本屋大賞受賞第一作」とのことで、
2004年の雑誌発表作品を単行本として出版した、ということのようです。
納得。
びっくりするほど薄い本なのも、そういう事情だったのですね。

『羊と鋼の森』にはまっすぐにつながっていた。まったく違う物語なのに、根っこがしっかりとつながっていた。

と、今回の出版に際して筆者自身が語ったそうで、なるほどと思いました。
作品テーマのモチーフとしては、そうですね。
自分が惹かれるものへと、まっすぐに向かっていく純粋な気持ち。

でも、私は、今の作風のほうが好きです。
作家としての成長のようなものも感じました。

2017年2月 5日 (日)

『Masato』

20170205 岩城けい 『Masato』 集英社 2015

前作『さようなら、オレンジ』(→)が凝った構成だったのに対し、
本作は、大変読みやすいシンプルな構成。

父親のオーストラリア転勤に伴い、
オーストラリアの現地校に転勤した小学5年生まさとが、
英語を理解できず、いじめにあう状況から、
同じような孤独感を抱く台湾人ケルヴィンや、自然児ノア、
生き生きとしたサッカー少年たち、ヘジャブを頭に巻く転入生少女、
親身になって導く教師等との交流を糧に、
仲間をつくり、
自分の人生を切り開いていく様子が描かれます。

海外生活への夢が砕け、孤立を深める母親、
その母親との関係を持て余す父親、
高校受験を控え、現地校ではなく日本人学校へ入学し
ほどなく帰国してしまった姉。

家族が悩み、ぶつかり、混迷を深める様子、
日本に残る祖父母のことも絡み、実にリアリスティック。

まっすぐ前を見つめる、健康的な青春小説であると同時に、
「母」vs「父」の異文化間コミュニケーション論としても読めます。
もちろん、日本社会vs豪州社会の比較論としても。
さくさくと読めてしまう、薄い本でありながら、中身は濃いなあと感じました。


2017年1月27日 (金)

『遠い唇』

20170127 北村薫 『遠い唇』 KADOKAWA 2016

7篇の短編からなるアンソロジー。

珍しく、巻末に著者による「付記――ひらめきにときめき」
が附属していました。
TVドラマ用に書き下ろした作と、雑誌投稿作の2種がある
「ビスケット」についての経緯説明。
そして、最後の最後に次のようにあります。

なお、付記の付記になりますが、本短編集は、謎と解明の物語を中心にまとめてあります。その中で「ゴースト」の色合いが違います。これは、この夏、角川文庫に入った『八月の六日間』の主人公の心を描く習作――といった意味合いがあります。そのため、ここに収めるのが適切と思いました。

なるほど。
なんだか、雑纂的だなあ……という読後感を持ったわけです。
いつもは独特の雰囲気を色濃く残す北村薫の作なのですが、
本作からの印象は、拡散してしまったような。

やはり、表題作の「遠い唇」が心に響きました。
暗号にして贈らずにはいられなかった、大学時代の先輩の想い、
気づくのがあまりに遅すぎた解読、切ないです。

まるで星新一の作品のような「解読」には、びっくりしました。
新境地を開拓しようとしているのでしょうか。
また、「ビスケット」を18年前の作品『冬のオペラ』の続編として書く
というアイデアにも。

そういえば、去年も、北村薫の作品を一つ読んで、
それを契機に過去の作品に遡って読んだりしたのでした。(→
ううむ。
なかなかやるな、北村薫。

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