無料ブログはココログ

PIOの新ブログ

« バッハ一族とその音楽 第1回 | トップページ |  『村上春樹と私』 »

2017年1月12日 (木)

『セカンドハンドの時代』

20170112book スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著 (松本妙子・訳)
『セカンドハンドの時代 「赤い国」を生きた人々』
岩波書店 2016 
(モスクワでの出版は2013年)

著者は、2015年ノーベル文学賞受賞、
1948年ウクライナ生まれの女性作家。
本書、膨大なインタビュー記録の集積で、600ページに及びます。

語り手たちの背景を、訳者あとがきから抜粋します。

1991年8月の「窓の下にはほんものの戦車がとまっていた」クーデターは、改革派のゴルバチョフ大統領にたいして保守派のヤナーエフ副大統領がらが起こしたが、エリツィン・ロシア共和国大統領を中心とする市民の抵抗にあい失敗、三日間で終わった。その結果、ソヴィエト連邦は同年12月に解体、エリツィンが指導するロシア連邦と他の独立した国々にわかれ、ロシアは資本主義に舵をきり市場経済への移行が急速にすすめられた。しかし、ガイダール経済担当副首相(92年1月当時)の主導による「ショック療法」と呼ばれる市場価格の自由化は、国を大混乱におとしいれた。

立場が違えば、ものの見方もまったく違います。
旧ソ連・共産党の中枢にいた人物と、政府による盗聴を恐れて声を潜めて生活していた庶民と…。

第一部「黙示録による慰め」が、1990年代
第二部「空(くう)の魅力」が、2000年代についての記録ですが、
実はまだ第一部を読んだのみ。

とにかく、知らなかったことがたくさん…。
ゴルバチョフ失脚の際に、
ソ連邦大統領顧問、「赤い元帥」アフロメーエフが自殺していた、とか、

19世紀には貴族の屋敷にロシア文化のすべてがありましたが、
20世紀には台所にあったのです。

と述べるように、ソ連時代の国民たちは
政府側の盗聴をさまざまな方略で封じ込めつつ、
本を読み、日々台所に集まっては、親密にあれこれ語り合い、
アカデミックな議論も交わしていた、とか。

ロシア国家となった今、ソ連時代を振り返って、
ゴルバチョフ登場の頃の若いインテリ層、教養人は無邪気すぎて、
解散するのが早すぎた。
気づかぬうちに、ヤミ屋や両替商が政権を取ってしまっていた。
カネ、カネ、カネがすべてになり、インテリ層が没落した今、
共産時代の自由な息吹を忘れない。(p.23)
……という独白に、ハッとさせられました。

そして、
ロシアはなにか並はずれたものを創造し、
それを世界に示さなければならない、そんな気分がいつも漂っている。
神に選ばれし民ということだ。
」(p.16)

という発言に、日本に漂う気分との大きな差を感じました。
こういう土壌があるからこそ、
クラシック音楽界でも、若手演奏家たちの抜きん出た個性が培われ、
ロシアの芸術は豊穣なのだなあ…とも思ったのでした。

« バッハ一族とその音楽 第1回 | トップページ |  『村上春樹と私』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« バッハ一族とその音楽 第1回 | トップページ |  『村上春樹と私』 »