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2017年1月 8日 (日)

『ピアニストは語る』

20170108book ヴァレリー・アファナシエフ 『ピアニストは語る』
講談社現代新書 2016

世界的に「鬼才」と呼ばれているピアニストとのことですが、
私は今までよく知りませんでした。
インタビューに答える、という形式で、
率直に、真摯に、時に哲学的に
アファナシエフ氏が論が展開していきます。

第一部「人生」では、
モスクワに生まれ、27歳でベルギーに亡命し、フランスへ移住し、
またベルギーへ戻ってきた人生について、
その葛藤、決断、経緯を。

第二部「音楽」では、
1947年生まれの氏が、音楽に対する解釈を、
どのように発展、変化させ、現在に至ったかを。

「はじめに」では、まず、
氏の抱く、日本に対する賞賛の念が語られます。

日本では人生のハーモニーは、ほんの些細な礼儀正しさから始まります。このことが、本当にファンタスティックだと思います。生活を共にすること、人に会うこと、互いに挨拶を交わすこと、こういったすべてのことが日本では、言うなれば、細かく決められています。(中略)日本にはこの厳密な決まり事が存在し、みながこの決まり事に則って行動している。このことが、素晴らしいと思います。

読み始めは、「ええっ?本当??」なんて思っていましたが、
読み終えて、改めてこの箇所に戻ってみると、
アファナシエフ氏の基本姿勢
~ポピュリズム、自己顕示といったものと距離をおき、深く思索する姿勢~
の現れだったのだなあ、と思います。

ソ連から亡命した多くの芸術家が、ソ連体制について声高に語り、
それによって世の注目を浴び、芸術活動を軌道に載せていったのに対し、
アファナシエフ氏は口を閉ざし、それゆえに世に認められるのが遅れた
とのことですが、
それは、「西側」は実力そのものだけで認められる世界であると信じ、
実力だけで勝負しようという矜持があったから。
もし亡命前に「西側」の現実~ポピュリズムの威力~を知っていたら、
亡命への意識も違っただろう…と語る氏。

人生を振り返って、
自身がゆっくり成長してきた、その長い学びのプロセスは幸運であり、
絶えず発展し、精神と自由を拡げていることが人生から得られる最高の贈り物
と述べる氏は

ある意味では、人は自分の運命をよく聴くべきなのでしょう。タオイズム(道教)の流儀ですね。
人生とは絶え間なくハーモニーを探求すること。そして完全なるハーモニーとは死だけです。(p.168)


ステージに上がるとき、こちらが静寂、そちらが音楽というふうに考えたりはしないものです。ある意味では、静寂と音楽はひとつになっています。ときに静寂は聞こえてくるし、ときに音楽が静寂となる。自分がしていることを聴けば、自然とそのようになります。自分の演奏を聴く、すると音楽は静寂へと育っていくでしょう。音楽は自ずと静けさに向かうのです。(p.154)

と、音楽を語るのです。
著作でも活躍しているという氏の深い思索ぶりが伝わってきます。

今まで何も知らずに来ましたが、
その演奏にも、そして著作にも触れてみたいなあと思いました。

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