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2016年2月22日 (月)

『つまをめとらば』

20160222book 青山文平 『つまをめとらば』 文藝春秋 2015

今回、直木賞を受賞した時代小説。短編6篇を収録しています。
最後の短編のタイトルが「つまをめとらば」ですが、
ただ、それだけではなく、
6篇すべて「つまをめとる」「めとられる」に関連する内容です。

最近は、短編の連作小説というと、
登場人物が共通したり、同じ物事を異なる視点から描いたり
といったタイプが多くなっているように感じますが、
これは、それらとは異なります。
共通するのは、江戸時代の武士の世界を描くことでしょうか。
ある意味、古典的な短編集ですが、逆に新鮮に感じました。

語り口のバリエーションも豊かなことも、また新鮮。
試しに小説の冒頭文を並べてみると、次のようになります。

「なんだ?」
長倉克己は怪訝そうに言った。
(「ひともうらやむ」)

なんの商いとも見分けのつきにくい男が、神谷町の屋敷を訪ねてきたのは、妻の朋が急な心の臓の病で逝った二十日ばかり後のことだった。(「つゆかせぎ」)

神尾信明との縁組が決まったとき、民恵は嬉しい反面、気が重かった。(「乳付」)

石出道場でのいつもの稽古から戻って、高林啓吾が土間に入ると、兄嫁の理津が小茄子を漬けていた。(「ひと夏」)

下谷広小路は常楽院に分け入る三枚橋横町に、こうじ屋はある。
(「逢対」)

幼馴染みの山脇貞次郎が、屋敷の庭にある家作を貸してほしいと言ったのは、上野の御山の犬桜がほころび始めた頃だった。(「つまをめとらば」)

男の立場、女の立場、
結婚前の若者、新婚の若者、
婚期を逃しつつある年代の者、
老境を迎えつつある者、
舞台も、江戸あり、地方あり、飛び領あり。

読みやすく、さらっと読めました。、読後感もまた「さらり」。
私にとっては、気分転換の佳作とでもいう感じでした。

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