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2016年1月 4日 (月)

『忘れられた巨人』

Ishiguro_2カズオ イシグロ著 土屋政雄訳 『忘れられた巨人』
早川書房2015


カズオ イシグロの10年ぶりの新作とのこと。
前作は、2011年に見た映画で衝撃を受けた、
『私を忘れないで』。(→
その後、映画の原作である小説そのものも読みました。

さて、本作『忘れられた巨人』は、がらりと趣を変え、
アーサー王伝説の頃を舞台とした、騎士たちの物語。
龍、鬼、剣、馬、藁、…
といった言葉が跋扈するファンタジー小説です。

とはいえ、この著者のことですから
もちろん、「メルヘンの世界」を描くことが主眼ではありません。
主人公は、人の好い老夫婦。
龍の吐く霧のせいで記憶を失っていく…という現実に気づき、
ぼんやりと霞んでいく行動力にも危機感を抱いた二人は、
ともに村を出て、息子に会いに行こう!と大きな決断をします。

小説の初めの方では、
「記憶をおぼろげにさせる」という暴力的な仕業に怒りを覚え、
自らの記憶を取り戻そうとする行動は「善」そのものに思えるのですが、
次第に、ものごとの裏の面が透けて見えてきます…。

老夫婦の夫アクセルの過去とは?
この夫婦は本当に互いを思い合い、寄り添ってきた二人?
龍の元への案内人ともなる傷ついた少年は何者?
化け物も敵の兵士もやすやすと倒す、優秀な騎士の素性とは?
旅の途中で出会う老騎士の任務は?
どんどん謎めいていくストーリー。。。

英国の鈍色の空と、冷たい空気そのままに、
ファンタジーとはいえ、淡々と静かに物語は進んでいきます。
龍退治と、主人公二人の秘密の開示で終わるストーリーを追うことは
それほど難しくはありません。
記憶を取り戻せば、征服欲がよみがえり、民族間の争いが始まる…
このあたりは、現在の世界情勢とも連動しているでしょう。
戦慄を覚えます。

けれども、筆者が描きたいものはそれだけではなく、
おそらくは「アーサー王伝説」を下敷きとして、
さまざまな暗喩や警句などがちりばめられているに違いありません。
そのあたりを全く読み解けない自分が不甲斐ない…という読後感でした。

難しいです、外国文学。。。

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