無料ブログはココログ

PIOの新ブログ

« 『家へ』 | トップページ | 成人式 »

2016年1月10日 (日)

『窓の向こうのガーシュイン』

宮下奈都 『窓の向こうのガーシュイン』集英社2012

ガーシュインって、「ラプソディー・イン・ブルー」かな?ピアノ関連?
なんて思って手に取りましたが、さにあらず。
エラ・フィッツジェラルドのレコード「エラ・イン・ベルリン」に収められた歌
「サマータイム」のことでした。
ジョージ・ガーシュイン作曲のオペラ「ポーギーとベス」の劇中歌。
収録された歌声はもちろん、そのレコードジャケット、歌詞の意味が、
主人公を人々との交流へ、成長へと導いていくのです。

「私は成長してもいつもどこかが足りなかった」
「足りない、足りない、といろんな人にいわれて育った」
という主人公、佐古さんは、19歳でホームヘルパーとなります。
初めての派遣先で、
いつもは「雑多な音が混じってわやわやになって」聞き取れないのに、
左半身が不自由な依頼主、横江先生の言葉ははっきりと聞き取れ、
自然体でふるまえることに気づく佐古さん。
「炊飯器の言葉を聞くことができる人は貴重です。あなたは筋がいい」
と、人生で初めて褒め言葉をもらいます。

横江先生宅には、
ボードゲームのひとつ、探偵ゲームの「犯人」に似た男の人がいて、
佐古さん自身と同じ年ごろの少年、隼も登場。

世間とはちょっとずれた彼等も、
佐古さんに、いろいろな「初めて」をもたらしてくれます。
この二人の男性と、佐古さんと、だんだん老いを深めていく先生。
その日々が優しい筆致で、柔らかく描かれて行きます。

「ねえ、隼。しなくていい、しなくていい、って思ってるのは意外と身体に溜まるよ。」

「しなくてもいいや、って思っちゃえばたしかに平穏に暮らせると思うの。いろんなことに距離を取って、近づかないようにして、何にも執着しないで生きられれば楽だよ。だけどね、なんでもかんでもなくていいって思えるようになったらね」

こんな発言が繰り出せたのも、佐古さんの「初めて」の一つ。
このせりふ、そのままうちの愚息に投げたい……と思いました。

« 『家へ』 | トップページ | 成人式 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『家へ』 | トップページ | 成人式 »