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2016年1月 9日 (土)

『家へ』

Ie_e 石田 千 『家へ』 講談社 2015

芥川賞の候補作です。
既に出版されているなんて珍しい…と思ったら、
芥川賞候補になるのはこれで3度目という作家さんなんですね。
この方の作品、初めて読みました。

派手ではないけれども心に残るものを持つ、いい作品でした。
ストーリーも、その描き方、構成も、洗練されている印象です。

主人公「シン」の里帰りの場面から始まるのですが、
複雑な家庭って、なに? じいちゃんって、彼とどんな関係?
シンは東京で何をしているの? 母親との折り合いは?
そんな素朴な疑問が生まれます。
そして、章が進むにつれ、薄膜をはがすように明らかにされていきます。
わざとらしくなく、静かな時間の流れとシンクロできるような感じ。

シンを取り巻く人々は、みな素朴で一生懸命生きているいい人なのに、
世間様から見ると……という事情も抱えていて、
白い眼で見られることが多々あるという悲しさ。
その中心人物となるシンの母親が、ステレオタイプの母親ではなく、
妙にエキセントリックでもなく、現実感を持って堂々と描かれていました。
共感します。

そして、シンにも。
漁業の地に生まれ、その道を勧められながらも、
芸術を志す彼の葛藤、周囲の人々との交流、そして将来へ向けた行動に。


芥川賞受賞作というと、
過去には、読み続けるのも気分が悪いようなテーマだったり、
ひらがなだらけ等のスタイルが読みづらかったりと、
最後まで読めずに途中放棄した作品も少なくありません。
話題になった「火花」も、小説冒頭はともかく、終わり方には納得できず…。

そんな私が共感できた本作が受賞できたら嬉しいな、と思いました。

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