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2015年7月19日 (日)

『音符ではなく音楽を!』後半

Pianist_kataru2 焦 元溥(チャオ ユアンフ)著 森岡 葉 訳
『ピアニストが語る! 音符ではなく音楽を!
~現代の世界的ピアニストたちとの対話第二巻~』アルファベータブックス  2015

第1部 ポーランド、ハンガリーのピアニスト
第2部 ロシアのピアニスト   (→) にひき続き
第3部 フランスのピアニスト
を読みました。
(ロジェ・プトリ、 テオドール・パラスキヴェスコ、 ジャック・ルヴィエ、 ジャン=フィリップ・コラール、 ミシェル・ベロフ、 ラベック姉妹、 パスカル・ロジェ)。
いわゆる「楽派」による演奏法の差は、そこここでかじり聞きするだけで
腑に落ちなかったので、これを読んでやっと納得できました。

フランス・ピアノ楽派というのは、マルグリッド・ロンに代表される「真珠のような奏法」と呼ばれるもので、チェンバロの発展とともに生まれた、指先だけで軽く弾く奏法のこと。
この奏法の核心は音の明確さにあって、すべての音の粒が清澄であることが求められる。
スカルラッティや、フランスの作品の一部を弾くには適した奏法だが、ベートーヴェンなどの演奏には適さない。


著者にこの奏法について尋ねられると、多くのピアニストが、これはもう衰退したものだ、一時的な流行にすぎなかったと断言していることに驚きました。
いま、日本からも多くの有望な若手がフランスで学んでいますが、彼らの演奏の柔らかい音色の美しさに感動することが多く、
やはりフランスは特別なのだろう、特別な指導法があるのだろう
と勝手に思っていたものですから。
おそらく「フランス・ピアノ楽派」という専門用語では表しきれない、フランスならではの音楽風土というものがあるのでは…と思います。

とはいえ、インタビュイーたちの発言には
フランス芸術の中心は音楽というよりも美術だ、フォーレの音楽だけを集めたコンサートは魅力に欠けるだろう、等々、フランス音楽を客観的に突き放すコメントが多々出てきているところも印象的でした。
唯一パスカル・ロジェは、フランス音楽を世界に広める音楽大使といった意識を持って活動しているとのこと。日本でも比較的安価にコンサートが聴けるのは、そんなところにも理由があるのでしょうか。奥様が日本人とのことですし。

読者や若い音楽家へのメッセージを求められると

自身を磨き、いつも自然に、作品のスタイルと格調を大切にしなさい。(ルヴィエ)
よいピアニストになるためには、まずよい「人間」にならなくてはいけません。(コラール)
情熱が足りない若者に進路変更させるのが、指導者として大切な仕事。(ベロフ)


といった具合で、音楽求道者というより、人生の一部としての音楽、というスタンスが共通してあるように感じられました。

個人的には、ラベック姉妹の活動に驚きました。

あらゆるジャンルの音楽家と交流し、彼らを結びつけるサロンを開き、名を成してからも新たな師を得ては研鑽を積み、新たなデュオ作品を委嘱し、ラベック姉妹基金を設立してピアノデュオ作品の普及と指導も推進する…。まさに八面六臂の活躍です。
過去の録音をすべて録音し直したいという意気込みでいるとは、これまたすごい。
実は私、1980年代半ばと、90年代後半の2回、彼女たちの演奏を生で聴いているのですが、初めの1回はあまり印象に残らず、2回目には深く感動した、という記憶があります。
改めて聴いてみたくなりました。

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コメント

ルカさん(フランス人の)を聴いた瞬間、私を取り巻く空気がフランスのそれへ。不思議だなと思いつつ聴いていたのを思い出します。昔フランスの近くに住んでいたので、あらゆる記憶が過去へ遡るような感覚でした。素人の私には、生まれた国によって持っている色彩、音色が何故異なるのか、毎回不思議です。そして日本人の音色に色があるなら、どんな色合いに感じられるのか、そんなことに全く意味はないのか、それも含めて謎なのです。私が忘れられない言葉は、とある有名指揮者による討論会、貴方にとって音楽とは?の質問に、それまでクールだったその方が突然泣きそうな子供のような顔になり、たった一言「need」「I need 」と振り絞るように発した言葉です。全てが理解できました。

そういえば、ヘルシンキのカフェでフィンランド在住の日本人ピアニストがたまたま後ろに座っていらっしゃいました。透明な空気を纏った美しい方でした。(あ、男性!)

ヘルシンキの音楽ホールで2台のピアノによるイベントがありました。45分のミニコンサートです。聴きなれたオケ版よりも骨格がはっきり見え、青く透明な光の中、素敵な体験になりました。東洋人は私と夫だけだったので、地元の新聞社にインタビューを受け、次の日、新聞に載りました。「感銘を受けていた!」と書いてあるようでした。
Redkin君の音で聴いてみたいな~と思ったのは内緒(笑)。

またも長文・・・ご容赦ください・・・。

まいこさん

素敵な書き込み、ありがとうございます。
まいこさん、フランスの近くにお住まいだったご経験が?
ヘルシンキにも最近いらしてますし、ヨーロッパ通とお見受けします。
かっこいい!
今回はご当地新聞にもご意見が掲載されたなんて、ますますかっこいいですぅ。

フィンランド在住の男性ピアニストといえば、左手のピアニストとして著名なT氏でしょうか?(それ以外の方を知らない…coldsweats01

日本人の音色がどう聴こえるのかはわかりませんけれども、
ダンタイソン、フーツォンなどのアジアのピアニストは音色が称賛されてますよね。
この「ピアニストが語る!」第3巻にはアジア人ピアニストが登場するようですよ。
わくわくnote

ピアノをやってる友人が教えてくれました。
10/4にマリンスキー劇場でレーチェキンさんのソロリサイタルがあるそうですよ。
ショパンとプロコフィエフだそうで。配信してくれるといいんですが。
(ご興味なかったらごめんなさい)。

まいこさん

おお!レーチェキン君のリサイタル!!興味あります。おおありです!
貴重な情報をありがとうございました。
もし配信情報などゲットされた暁には、またお教えくださいませ。
よろしくお願いします。m(_ _)m

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