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2015年3月 6日 (金)

『小澤征爾 覇者の法則』

中野 雄 『小澤征爾 覇者の法則』 文春新書 2014

日本という東方の島国からなぜ、
小澤征爾という、西洋音楽の世界で大活躍する指揮者が出たのか。
なぜ彼なのか。
それを解き明かそうとする本です。
その論理、私にはすんなりと腑に落ちました。

(1)強靭な精神力と行動力の遺伝子
父の小澤開作は、家父長制の世の長男でありながら、
外の世界が見たいと家出を敢行して上京し、
苦学しながら歯科医となって24歳で満州へ。
満州では、軍人・石原莞爾とともに民族協和の思想運動で活躍。

(2)自然体で強力にサポートする家庭環境
満州からの引き上げの際にもアコーディオンは手放さず、
田舎に引っ込んだ困窮生活でも、
「我が家の子供たちは、家業を継いで生きるこの土地の子とは違う」
と、時間も金も惜しまずに、私立の成城学園に子供を通わせる。
必要と見れば、法外な支出でピアノを入手し、リヤカーで自宅に運んでしまう。
そんな、一種破天荒な家庭で育った。
一流音楽家養成を目指し、英才教育を施されたのとは一線を画する。

(3)師・齋藤秀雄の徹底教育
「この国に本物の西欧クラシック音楽を根付かせたい」との志で
前人未踏の「誰にでも習得可能な”技術”としての指揮法」
を創造した齋藤秀雄。彼と遠い親戚筋であったことから、
中学生の征爾が単身で齋藤氏の自宅へ指導依頼に乗り込み、
開校した音楽学校の第一期生となって、徹底指導を受けた。
また、唯一無二の助手として裏方仕事を徹底的に仕込まれた。

(4)征爾自身の人間的魅力、対人関係能力
ピアニストになるには遅すぎるスタート、滞る月謝、
ラグビーにものめりこみ、遅刻までする征爾を破門するどころか、
月謝免除までしてピアノ指導をした一流ピアノ教師をはじめ、
多くの一流音楽人が彼を支援した。
征爾には、周囲の人を味方につけてしまう人間的魅力がある。

(5)征爾がすごす時間の密度の濃さ、感受性の強さ
「小澤伝説」の筆頭ともいえるヨーロッパへの貨物船旅行、
スクーターで走り回るフランス生活で、
「まるで子供の時からヨーロッパで育った人間みたいに」
事物を受け止めるようになったと述べているように、
体験を見事に脳内に蓄積し反応させて、自己表現につなげている。

(6)日本経済の発展期という時代
経済界、経済人がこぞって征爾をサポートできる時代であった。

********************

上記は、本書の章立てなどはかなり無視して、
私の印象に残ったことを列挙してみた、恣意的な要約です。
指揮者となってからのエピソードにも、「ほう」と思うこと多々。

戦後日本の知的リーダーの一人、丸山眞男の言葉
「教育とは、単なる知識を伝授する行為ではない。
具体的な事柄から抽象的な普遍的原理を抽出する能力を付与すること、
更に、師のもとを離れても、生涯独力で学び続ける習慣を身に着けさせること」

をひいて、
齋藤秀雄の信条との共通性を指摘し、
今の征爾も、この流れを汲む立ち位置にあるとしていましたが、
この指摘にも、なるほど~と思いました。

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コメント

大陸から引揚げて来た方々には、独特の世界観があり、
そのご活躍を通し、島国日本で暮らして来た者には、
無い物をお持ちと、常々感じております。

小沢征爾氏には、30年ほど前、某ホテルで、お会いしたことがあります。
数日間の滞在中、ご家族でお食事されている所を、
何度かレストランでお見かけしました。
その時のレストランマネージャーとのやり取りから、
言葉は悪いのですが、大変な「人たらし」とお見受けしました。
人を引きつける魅力満載の方ですね。

ananさま

さすが、ananさん!
数日間にわたって征爾氏を観察された経験をお持ちとは!
「人たらし」、まさにそうなのでしょうね。

ただ、征爾氏、メジャーになって以降は、
ウィーンフィル、ニューイヤーコンサートの指揮者をつとめたものの、以来2度と呼ばれなかったことを見ると、……とか、
ウィーン国立歌劇場総監督就任は、LEXUS(トヨタ)のスポンサー就任と抱き合わせであったとか、
私が知らなかった情報も多く、そうだったのか…と唸らされました。

小澤征爾絶賛しまくり、ではない本なのですね。
読んでみたいです。

ananさま

はい、崇拝者モードではなく、冷静に分析する立場であると感じました。
NHK交響楽団が若かりし征爾氏の指揮ボイコット…という有名な事件についても
さまざまな一次資料にあたり、納得のいく説明がされていたと思います。

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