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2014年11月22日 (土)

『笹の舟で海をわたる』

角田光代 『笹の舟で海をわたる』 毎日新聞社 2014

戦時中、小学生として疎開生活を体験、
戦後、見合い結婚して高度成長期に二人の子育てをし、
60代を迎えている左織が主人公。

幕開けは、左織が風美子とともに海辺の豪邸を訪れ、
その家を買って二人で転居する、しない、という場面から。

妙に金回りの良い風美子とは、何もの?
地味な左織との関係は?あれ?姉妹?
という疑問からのスタートですが、
あっという間に二人の関係が明らかになり、
ストーリーは淡々と進みます。
昭和の女一代記、いや
左織、風美子、交錯しつつ進む二人の人生記
とでもいいましょうか。

『空中庭園』のように苦い毒に満ちているわけでも、
『紙の月』のようにサスペンス色が濃いわけでもなく、
薄墨で描いているような趣の作品。

読後感は、すっきりしています。
海辺の豪邸の場面から、時間を遡って二人の姿を描き出した後、
60代での転居問題に、左織が初めて自ら決断を下し、
風美子に対する屈折した思いにも区切りをつける場面には
共感を覚えます。

ちょうど左織の娘、百々子と同世代にあたる私、
自分の人生と重ね合わせて読める箇所も多々。
読んだ後に、じわじわ心に沁みこんでくるような本でした。

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