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2014年2月28日 (金)

『さようなら、オレンジ』

岩城けい『さようなら、オレンジ』筑摩書房2013

太宰治賞受賞作で、芥川賞候補作。
例のごとく、図書館予約で数か月待って手元に届きました。

小説は、一人の女性の描写から始まります。
難民として夫に従って異国にやってきたサリマ。
異国は「人種のるつぼといわれる場所」ではない「大きい島」。
彼女は面接で「朝3時に職場に来い」と言い渡され、
渡された「膝丈のたっぷりした前開きの作業着」を着て働きます。

固有名詞は「サリマ」だけ、
まるで推理小説を読むような感覚で読み進むうち、
サリマは、もう一人の主人公
…彼女が「ハリネズミ」と呼ぶ黒髪のインテリアジア女性…
と出会います。

小説の途中に、文字のフォントを変えてはさみこまれる
「ジョーンズ先生」宛てへの丁寧な手紙。
差出人は「S」。

そして、突然英文で登場する「Personal Nortice」。

これらがすべて納得され、結び合わさったとき、
やっと女性二人の置かれた状況がくっきりと浮かび上がります。
これが59ページ目。
そして、最終頁まで読了するに至って、
この構成の意味するところが、なるほど!と得心されます。

内容はとても深いです。

久々に、がっしりした大きいものを読んだ、という読後感。
けっして長くはない、薄い本なのですが。

海外で生き抜くということは
母語以外の言語をわがものにするということは
その人にとってどのような意味を持つのか。
その人のアイデンティティとは。
「文盲の難民」「挫折を抱えるインテリ」という二人が
立ち向かったものとは。得たものとは。
家族とは。隣人とは。学校とは。

異文化理解、語学教育などに興味を持つ方に、
自信をもってお奨めします。

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