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2013年7月 9日 (火)

『時が滲む朝』

楊逸(ヤンイー) 『時が滲む朝』 文藝春秋 2008

言わずと知れた、芥川賞受賞作。
受賞当時、日本語を母語としない受賞者ということで、
随分話題になりました。
興味を惹かれつつも、ちゃんと読む機会を逸していましたが、
今回、機を得て読んでみました。

若者の熱くたぎる精神力、向上欲、切磋琢磨する姿、
世の役に立ちたいと切望する心……

平成の世にはもはや死語?
というような世界が、淡々とした筆致で展開されていきました。
それも、臨場感と説得力を持って。

家族、地域の期待を担って、
地方の名門国立大学に進学した若い親友二人。
時代の流れ、尊敬する恩師、学内での人間関係に導かれ、
学生運動に参加し、熱く国家の未来を語るも、
直面したのは天安門事件。

その後、大学を追われ、
一人は妹を通じて知り合った残留孤児の女性と結婚し、来日。
一人は渡米して印刷業を起業。
恩師は行方不明となり、かなりの時を経て…

文化大革命
天安門事件
北京五輪
……切れ切れに知っていた史実が、
この小説を通して、私の中で一つにつながったような気がします。

内容が内容だけに、
これは中国語では書けなかったであろう……と思いました。
「なぜ日本語で?」などという疑問を超越した、
自明の帰結としての日本語執筆だったであろうと。

楊逸さん、その後も着々と日本の文壇で活躍されていますが、
その第一歩にふさわしい作だなあ、と思いました。
読んでよかったです。

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