無料ブログはココログ

PIOの新ブログ

« 『野いばら』 | トップページ | 仙コン~ピアノ部門スケジュール~ »

2013年6月12日 (水)

『使者と果実』

梶村啓二『使者と果実』日本経済新聞出版社2012

先の記事に書いた『野いばら』の作者の次作です。

正直に言って、作品に漂う雰囲気はよく似ています。
前作では、現代のイギリスと、江戸末期の日本という視点。
本作では、現代のブエノスアイレスとロンドン、
そして、1930年代末期のハルビン、ベルリン、という視点。

二作ともに、異なる視点から描き出される恋愛物語、です。
そして、
前作では、エヴァンズの演奏するヴァイオリンが
物語の中での印象深いアクセントとなっていたのに対し、
本作では、
主人公、タダシの演奏するチェロが、
物語を動かしていくキーポイントになります。

「使者」とは、ドイツへチェロを運ぶという公務を担ったタダシを、
「果実」とは、タダシと奈津が楽しんだハルビンの果物を
直接的には指すのでしょうが、
それだけではなく、
なにものかを動かすという役割を担った人間と、
そうした人間たちが生み出す成果とを、ひっくるめて暗示しているようです。

視点、時代が多くなっただけ、
筋が絡み合ってわかりにくい部分もありましたが、
それがまた、粋なトリックとして効いているという側面もあり、
なかなか楽しめる佳作でした。

« 『野いばら』 | トップページ | 仙コン~ピアノ部門スケジュール~ »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『野いばら』 | トップページ | 仙コン~ピアノ部門スケジュール~ »