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2013年4月13日 (土)

『ツリーハウス』

角田光代『ツリーハウス』文藝春秋2010

「どっかへいけば、おもしろいことが待っていると思っているんだろ」
「でもね、どこにいったって、すごいことなんて待っていないんだ。その先に進んでも、もっと先に進んでも、すごいことはない。そうしてね、もう二度と同じところに帰ってこられない。出て行く前のところには戻れないんだ。」

壮大な物語の最後近くなっての場面。
大学を中退し、世界を知るために旅に出ようとしている孫(息子の長男)に向かって言った、藤代家の祖母、ヤエの言葉です。

ヤエは、戦前に満州へ渡り、そこで終戦を迎え、
帰国後に中華料理店「翡翠飯店」を立ち上げ、働き続けてきた人。
夫、泰造の死後、「帰りたい」と言うようになった80代の彼女を慮って、
孫(息子の次男。仕事をやめて時間もてあまし中)が、祖母を中国――昔の満州――への旅に誘い、叔父とともに同行するなかで、祖母の人生について知っていく。
平成の視点、昭和の視点、双方を行きつ戻りつして語られる、壮大な絵巻物語。

……といった内容です。

貧しい村から満洲を目指した人々の、
渡満後の生活、日本人同士、また現地の人々との交流、
「動かす人」「何もわからず動かされる人」の対比。

帰国後の、
ただ「怖いから逃げた」ことへの後悔、
真実であれ、嘘であれ、「引揚者」と名乗る人は助けてしまう心情。
それを理解しがたいと感じる子、孫たち。

満州が豊かだった頃、そして戦後日本の高度成長期の熱気、
昭和天皇の死、地下鉄サリン事件、新宿バス放火事件、
等の時代背景、事件と、藤代家の人々の関わり。

全12章、469ページに及ぶ大作ですが、一気に読んでしまいました。

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