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2013年4月18日 (木)

『アフターダーク』

村上春樹 『アフターダーク』 講談社文庫 2006

文庫本で300ページぐらいですから、
長編といってよいのかもしれませんが、
読後感としては、「新たな挑戦の習作」といった印象。

語り口が「僕」ではありません。
「神の眼」のように、第三者的立場で語る…というか、描きます。
それも、映画を撮るカメラワークのようにアングルを言語化して。

例のごとく、摩訶不思議な村上ワールド。
テレビの画面のこちら側、向こう側を行き来させられる眠れる美女
それも、深く深く眠り続けている美女、エリ
を描くのが、一つの視点。

もうひとつの視点……こちらのほうがメイン……として、
夜中のファミレスで再会した若い男女を軸に、物語は進みます。

 帰宅を避けてファミレスで分厚い本を読む、中国語専攻の女子大生マリと
 夜中のバンド練習に励むトロンボーン奏者、法律専攻の大学生高橋

マリは、眠れる美女エリの妹。
高橋は、エリの知り合い。

物語を動かすきっかけは、
中国人の売春婦の少女が、ラブホテルで男に暴行された、という事件。

アフターダーク、という題名にはさまざまな暗喩が込められているのでしょう。

◆美女であることをもてはやされ、マスコミにも取り上げられるうち、
 心を病んで眠り続けているのであろうエリ、
◆少女を暴行しても何も感じなくなっているエリート男性、
◆さまざまな背景を抱えて、ラブホテルで働く道を選んだ人たち、
◆家族との関係に問題を抱える、マリと高橋

めくるめくストーリー展開は、ありません。
一晩の出来事を、時間軸を追って、淡々と綴るのみ。
登場人物がどういう結末を迎えるのかは描かれず、
読み手に向かって、ぽんと放り出されてしまった、というようなエンディング。

それでも、村上春樹らしさはたっぷり。
わたくし、本日の行き帰りの通勤電車で、読み切ってしまいました。
この「読ませる」ムード作り、おみごとです。

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