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2013年2月26日 (火)

『レ・ミゼラブル 百六景』(2)

鹿島茂
『「レ・ミゼラブル」百六景~木版挿絵で読む名作の背景~』
文藝春秋1987
(文春文庫2012)

読み終えました。(前回の紹介は2/24→
映画で抱いた疑問点(2/23の記事参照→)、氷解しました。
やはり、原作ではしっかり描かれていたものが省かれていたのですね。

(1)コゼットの恋人、マリウス

映画では、「実は金持ちなのに、なぜか民衆運動に首をつっこんでいる甘ちゃん坊や」のように見えたのですが、違いました。
原作では、
 第1部 フォンテーヌ
 第2部 コゼット
 第3部 マリウス
 第4部 プリュメ通りの牧歌とサン=ドニ通りの叙事詩
 第5部 ジャン・バルジャン
と、章のタイトルにもなっているように、実に重要な役どころでした。

なんでも、ユゴー自身の姿がかなり投影されているそうです。
家庭の事情により、父(元・ナポレオン軍の将校)と引き離され、
祖父のもとで育ったこと。
父の死を契機として、政治思想が180度変化していくこと。
そして恋愛観なども。

映画では、次のような点が省かれています。

・コゼットをフォンテーヌから預かり虐待した宿屋の主人
テナルディエ(悪党としての惨めな人、典型ですね)を、
当初は「父の恩人」と思い込んでいたこと。

・人民軍に加わるかどうかのマリウス自身の逡巡、葛藤。

・テナルディエが、コゼットから搾取を図る悪党だと知った後に、
警部ジャベールにバルジャンのことを伝えてしまったこと。

(テナルディエ一味を捕える隙にバルジャンが逃げ失せたと
知ったジャベールが、「あいつがいちばん大物だったんだ」
とつぶやいて、第3部「マリウス」は幕を閉じます。)

(2)ジャベールの最期

映画では、警察側の密偵という身分を見抜かれ、
民衆軍から処刑されそうになったジャベールが、
バルジャンに救われたことを気に病んで
ビルの上を徘徊したのち、川に飛び込んで自殺する、
という設定でした。
(私はそのように読み取りました。そして腑に落ちませんでした。)

原作でのジャベールは、
傷ついたマリウスをかついで逃げるバルジャンを見つけますが、
バルジャンを即座に捕えるのではなく、辻馬車に乗る手助けをして、
「私は(お前を捕えるために)ここで待っている」と伝えます。
しかし、実際にはそうすることなく、姿を消してしまうのです。
そして、
バルジャンに命を助けられたこと以上に、自分が彼を許してしまったことに混乱し、
「ただちにとって返してジャン・バルジャンを逮捕するか、あるいは…」
という二者択一を迫られて、セーヌの早瀬に実を投げるのです。

これなら、納得です。

原作、さすがだ!と思いました。

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