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2012年7月14日 (土)

『母の遺産ー新聞小説』

水村美苗 『母の遺産ー新聞小説』 中央公論新社 2012

12_0714book水村美苗の作品は、
前回の小説『本格小説』、評論『日本語が滅びるとき』(→)、
ともに、非常に強く印象に残るものでしたが、
今回もまた、強烈でした。

50代になって、
母の死を契機に、それまでの人生を見返さざるをない
主人公、美津紀。

・両親の介護での葛藤、自らがすりへっていった過程
・奔放な母にふりまわされた出来事の回想、母を生んだ血脈への思い
・幼いころからの姉と自分の比較、母も含めた3人の関係の変遷

・夫との出会い、若い頃の高揚感、当初からの違和感、それが肥大していくまでのこと、
・自分の生家と夫の生い立ちの差、そこから生まれる理解し合えない部分
・自分自身の生い立ちの特殊性・決定的な裏切り発見のきっかけ、その相手とのやりとりの盗み見、

などなど、
美津紀の視点から、深い洞察とともに綴られていきます。
全66章、500頁以上の大作です。
現在、過去を行きつ戻りつしながら、暗く、つらい内容が、圧倒的な現実感をもって綴られますが、
現実にうちのめされつつ、最後には、自ら選んだ新たな出発に希望を見いだし……
という展開にも共感しました。

副題の「新聞小説」は、
本作が、読売新聞の土曜朝刊に連載されたもの、ということを表すともに、
祖母が自らを投影していた「金色夜叉」から脈々と、女性たちに影響を及ぼしてきた身近な媒体に対する、筆者自身の複雑な思い(誇り、郷愁、…)も表しているように思いました。

みごとに構築された、骨太の小説です。

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