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2011年10月27日 (木)

『風待ちの人』

伊吹有喜 『風待ちの人』 ポプラ社

――「海沿いの町」という紙を下げた中年女がヒッチハイクをしていたら、必ず乗せて丁重に扱え。不二家のペコちゃんに似たその女は腕利きの理容師で、乗せるとその礼に必ずドライブインで髪を切ってくれる。
 そうして男ぶりが上がったドライバーにはその後、きまって多くの福が舞い込むらしい。

こう噂される「ペコちゃん」と、彼女を乗せる羽目に陥った、不眠症の男を軸にした物語。

と書くと、
場末のラブストーリーか、はたまた、荒唐無稽なコメディか??
という感を抱いてしまいますが、……まったくもって、ちがいます!

二人の置かれた境遇が次第に明らかになっていくのですが、
ベールを剥ぐような、その描き方、おみごとです。
不覚にも(?)、読んでいて涙があふれそうになる箇所が、あちこちに。

暴力的ともいえるような「速い展開」、世知辛さに満ちた物語が多い昨今、
この作品に漂う、メルヘンチックともいえるような時間の流れ、
丁寧な話の展開、貴重です。

四十九日のレシピ』の著者による作。
確かに、物語に流れる雰囲気、似ています。
そういえば、この『風待ちの人』、
『四十九日のレシピ』をきっかけに、一度手にしていながら、
どうにも時間がとれなくて、読まずに図書館へ返却していたのでした。
そうとは気づかず再度リクエストし、読むことができてよかったです。

私としては、今回の『風待ちの人』のほうに、より親しみを抱きました。
作品名につながる次の一節、いいフレーズだと思いませんか?

――「何もかもコースアウト。道を踏みはずしたよ」
   「踏みはずしたんじゃないよ。風待ち中。いい風が吹くまで港で待機してるだけ」

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