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2011年8月24日 (水)

『オリンピックの身代金』

奥田英朗 『オリンピックの身代金』

読書好きの友人が「面白くて止められない」と言って歩き読みしていた、
というエピソードを知り、手に取りました。

確かに。

東京オリンピックを人質にした事件(金を出さなければ、オリンピック会場を爆破する)
を描くミステリーで、
時間を前後させつつ、犯人側の行動、警察側の行動が叙述されます。

しかし、この本の肝は、犯人と警察の駆け引き自体というより、
「東京オリンピック」という時代背景を生きていた人々の姿にあると思います。

山の手のお屋敷街に住む、上流階級家庭の人々、
建設現場・最底辺の労働を担っていた、東北地方からの労働者たち、
発展をとげ、輝く東京とはまったく別世界の、貧しい農村地帯、
郊外の公団での「近代的な生活」を喜ぶ若夫婦、
スリ、やくざ、外国籍の居住者といった人々がなす、一種の治外法権地帯、

権力を持つ国家公務員や警察と、民間人との軋轢、そして、
日本の復興を世界に示すオリンピックを成功させようという、国民一丸の意識。

「ああ、こういう時代だったんだ…」と、腑に落ちます。

空襲で家族を失い、スリとして生きてきた、秋田出身の男(重要登場人物です)
の発言が印象に残ります。……上滑りしない、地についた言葉。

「デモは都会の学生の盆踊りだ。ようくわがっだ。いい勉強になった。」(p.410)

「おめはすぐにそう言う(冨は東京に集中して田舎は貧しいままだと憤る)けど、東京がながっだら、日本人は意気消沈してしまうべ。今は多少不公平でも石を高く積み上げる時期なのとちがうか。横に積むのはもう少し先だ」
(p.451)

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