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2009年10月17日 (土)

『ピアノ・ノート』

『ピアノ・ノート 演奏家と聴き手のために』チャールズ・ローゼン 
2009 みすず書房
(Piano Notes: The World of the Pianist (New York, Free Press, 2002)

先月刊行の新刊本です。
今までに読んだピアノ関係の本のなかで、一番収穫がありました。
この本を読んで、胸に残ったことを記しておきますと

★ピアノを弾く者として、身体をきちんと作って、自分の音をよく聴いて、弾かせてもらえるチャンスを大事していきたい!
★プロのピアニストの抱くべき覚悟たるや、想像を絶する。コンクール至上の考え方にも問題がありそう。
★プロの演奏家の録音切り貼りが一般的なら、それができないアマチュア演奏の録音が悲惨に聞こえるのは、むべなるかな。
★「素人が仲間内で聴きあう音楽会」の意義は?
プロが友人のために弾く会では、聴き手に合わせてとっさの機転で曲を選び、即興演奏も行うものだそうですが、素人にはそれは無理。
実はこれって、最近になって勢力を拡大しつつある、歴史的に見ても新たなジャンル?

さて、本文ですが、大変切れ味の鋭い文、論の運び。……著者略歴を見て、納得です。

Charles Rosen
1927年ニューヨークに生まれる。4歳でピアノを始め、11歳でジュリアードを中退、モーリッツ・ローゼンタールに師事する。
1951年プリンストン大学で博士号を取得(フランス文学)。
コンサート・ピアニスト、音楽批評家・理論家。
これまでにニューヨーク州立大学、オックスフォード大学、ハーバード大学、シカゴ大学などで教鞭をとる(フランス文学ほか)


いくつか、印象に残ったところを要約しておきます。

第1章 身体と心

★「腕に力を入れず、包み込むような柔らかいタッチで弾くべし」の理由

1)身体的な理由(各指を独立させるため、自由な筋肉を得る)
腕の力を抜かなければ、各指の筋肉を独立して動かすことができず、音の響きに対する演奏者のセンスを発揮することができない。
音質を決めるのは、機械的・技術的なメソッドではなく、指のコントロールによる引き分け能力と響きのバランスである。

2)心理的な理由(いい音質を作り出す上で、心理的にうまく働く)
ピアニストの身体は演奏のあいだ非常に多くの部分が活性化するので、身体が心に及ぼす影響は顕著であり、身体の固さは音楽の固さとなって現れる。

第2章 ピアノの音を聴く

弦楽器奏者や木管奏者は、楽器を習いはじめたときから自分の音を聴く習慣がついており、それが無意識の、第二の天性のようになっている。
だがピアニストは言われないと気づかない。

第4章 音楽学校とコンクール

・コンクールで、誰かの解釈のコピーのような演奏をするピアニストに対して
「学位のための試験なら78点をつける。だが職業を賭けた場では、こういう演奏はコンサートホールから追放されるべきだとわたしは考え、最低点をつける」

・ピアニストの道を志す者へ
ピアニストはなにがどう転ぼうと、自分の好きな音楽だけを弾くべきだ。そして同時にそれと同じくらい重きを置くべきは、自分だけの独自の解釈ができると考えるものだけを弾くことである。
学位のため、コンクール優勝のためにしなければならなかったことは、なんの意味ももたない。音楽に対する自分の観点と合致しなかった過去の教育は、人生の前半にかぶってきた甲羅のようにさっさと捨て去るときである。

第5章 コンサート

「なんのために公共の場で演奏するのか?」
演奏のたびごとに、音楽作品をその理想とする客観的存在に近づける機会があたえられるから。

コンサートの成功の鍵をにぎるのは聴き手の集中度、聴衆の中にわきあがる関心の高さである。(玄人には容認しがたい演奏が、ある聴き手には作品の魅力を伝える演奏として熱狂的に受け入れられることもある)

第6章 レコーディング

・テープ・スプライシング技法(テープの切り貼り)
「つまるところ、わたしはまちがった音をスプライスで消すのと、納得のいくまで全曲とおして16回弾くこととのあいだに大した差があるとは思えない。」

レコーディングの目的は技量の優越性を誇示することではなく、最良の一枚を作ること。
コンサートでは一音のまちがい、ど忘れ、ぎこちないフレージング、ちょっとしたリズムの計算違いはさほど重要ではないが、何度も聴きなおすレコードでは、それがつまずきの石になる。レコードを聴くたびに、まちがいの箇所を待ち構えることになるからだ。

(以下略)

第7章 演奏スタイルと音楽様式 では、
ピアノという楽器の歴史と、演奏スタイルの変遷について述べられていますが、
今日のところはここまで、ということで……

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