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2009年7月30日 (木)

平野啓一郎『ドーン』

090730book 平野啓一郎というと、重い(ある意味、陰鬱な)テーマ、哲学的な筆運びの人、と思っていたので
(→ 『決壊』、『葬送』)、
ミステリー小説、エンタテイメント小説の趣で、一気に読ませる展開のこの本に、ちょっとびっくりしました。

でも、それはストーリー展開上の「仕掛け」にすぎず、
核にあるテーマは、さすが純文学!といった感じです。

有人火星探索を成功させて帰還したNASAクルー、
アメリカの選挙戦を戦う大統領候補と、そのブレイン、
彼らが中核となって、ストーリーは進みます。

だれしも相手によって見せる顔が違うということを表す dividual(分人)、dividualism(分人主義)という用語がキーワードの一つです。
「それゆえ社会は連帯を失ってゆくのだ」という、選挙戦の主張。それに対し、
「多様な考えの人間がいれば、それに対応する自分が多様になるのは当然」という主張。
そして、宇宙船という閉じた世界に6人だけで籠もる宇宙飛行士たちが、
その間、たった一つのdividual しか出せないがために精神的に追い詰められていく様子。

ほかにも、ネット監視&監視を逃れるための整形、政府と企業の癒着、テロと兵器、男と女、……現代社会のホットなテーマ満載です。

テーマは深く、ストーリーはドキドキはらはら。。。
そして、題名『ドーン』(dawn 夜明け)が暗示するように、希望が見える展開。
お勧めです。

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

昨日後輩との話で
この方と森見登美彦さんや万城目学さんなどを引き合いに出して
東大文学と京大文学の話をしていたところで、とてもタイムリーなレビューでした♪

図書館にリクエストしてみますww

>華音さん

今日の朝刊にも、この本の宣伝がデカデカと載っていました。
話題になっているようですね。


うちの息子は、森見登美彦さんにハマってるようです。
中学坊主で、あの浮世離れした大学生のどこに共感するんだか?

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