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2009年7月

2009年7月30日 (木)

平野啓一郎『ドーン』

090730book 平野啓一郎というと、重い(ある意味、陰鬱な)テーマ、哲学的な筆運びの人、と思っていたので
(→ 『決壊』、『葬送』)、
ミステリー小説、エンタテイメント小説の趣で、一気に読ませる展開のこの本に、ちょっとびっくりしました。

でも、それはストーリー展開上の「仕掛け」にすぎず、
核にあるテーマは、さすが純文学!といった感じです。

有人火星探索を成功させて帰還したNASAクルー、
アメリカの選挙戦を戦う大統領候補と、そのブレイン、
彼らが中核となって、ストーリーは進みます。

だれしも相手によって見せる顔が違うということを表す dividual(分人)、dividualism(分人主義)という用語がキーワードの一つです。
「それゆえ社会は連帯を失ってゆくのだ」という、選挙戦の主張。それに対し、
「多様な考えの人間がいれば、それに対応する自分が多様になるのは当然」という主張。
そして、宇宙船という閉じた世界に6人だけで籠もる宇宙飛行士たちが、
その間、たった一つのdividual しか出せないがために精神的に追い詰められていく様子。

ほかにも、ネット監視&監視を逃れるための整形、政府と企業の癒着、テロと兵器、男と女、……現代社会のホットなテーマ満載です。

テーマは深く、ストーリーはドキドキはらはら。。。
そして、題名『ドーン』(dawn 夜明け)が暗示するように、希望が見える展開。
お勧めです。

2009年7月27日 (月)

『挑戦するピアニスト 独学の流儀』

090727book早稲田中学・高校で数学の教鞭をとりながら、
ピティナ・ピアノコンペティションでソロ部門特級グランプリを獲得し、音楽界でも活躍する金子一朗氏の著作。

帯の文言にシビレます。

「ピアノ愛好家よ、尻込みするな。
自分の音楽を堂々と表現しようではないか。」

しかし…予想どおりのことですが…
「金子氏は愛好家などというレベルを超越しておられます!」

一読して、氏の豊富な知識と経験に圧倒され、へこみました。。。
曲目分析、「和声」などが出てくると、私にとってはまったくのお手上げ状態です。
参考図書なども紹介されているので、ちょっと元気が出たら頑張って勉強してみる…かも……??

私と全くの同世代(同学年)で、経歴(?)的には近しさを覚えなくもないのですが、
中学、高校時代の独学ぶりとか、大学ピアノサークル時代のエピソードとか
恐れ入りました!って感じです。

ご自分の歩んできた道の紹介、コンペティションの経験談などとともに、
この本のもう1本の柱となっているのが
「社会人として、いかに要領よくピアノ曲をマスターするか」
というスタンスからのアドヴァイス。

現在、私がまさに悪戦苦闘中の「暗譜」に関する記述については、
うんうん、と頷きたくなる記述満載。

ピアノに向かえないとき、いかにして曲と向き合い、練習時間を節約するか、など
必要とするトピックに応じて、何度か読み返してみたいと思います。

2009年7月20日 (月)

歌劇「ヘンゼルとグレーテル」

2009年7月20日(月・祝)15:00開演 17:30終演 @神奈川県民ホール

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ
フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」

グレーテル:カミラ・ティリング(ソプラノ)
ヘンゼル:アンゲリカ・キルヒシュラーガー(メゾ・ソプラノ)
魔女:グラハム・クラーク(テノール)

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初めて見るオペラでした。

第1,2幕は全体的に低調な印象。
舞台が暗いこと(夜の森という設定)、
音楽も、いまひとつインパクトに欠ける感じで、
ストーリー、舞台装置も「やっぱり子ども向け?」と思わせる雰囲気。
休憩中は、ちょっと気落ちしておりました。

が、しかし!
第3幕になって、その素晴らしさに目覚めました。
グレーテルとヘンゼル、とにかく二人は歌いっぱなしなのですが、
この二人のバランスの見事さといったら、たいしたものなのです。
グレーテルは、急遽の出演とのことですが(出演予定者がウイルス性流感に)、
それで、まあ、よくぞ、この極みに!

また、出演者の演技力は、唖然とするほどです。
主演二人の「子ども」らしさにも舌を巻きましたが、
「凄い!」と絶句するレベルだったのが、……魔女!
テノールの男性なのですが、いやもう、特殊メークはもちろんのこと、
笑い声、歩き方、手の上げ下ろし……振る舞いすべてが不気味かつコミカル。
舞台全体を、まがまがしくも童話チックな雰囲気に包みこんでしまうのです。
すごいオーラでした。

後半以降は、音楽、舞台の「オーラ」に圧倒され、引き込まれてしまった私です。
若者たちのオーケストラ演奏も立派でした。
特に、各幕の冒頭で活躍する金管楽器。
曲の冒頭の金管ソロは、プロのオケでもなかなか成功しないものなのに、
今日はすべてバシっと決まり、やわらかな音色も見事なものでした。

PS
ヤマハ音楽教室のCMで子どもたちが歌う旋律
「ソーファミソファミレ、ソーファミソファミレ、ドレミファソーラファミ・レ・ド」って、
この「ヘンゼルとグレーテル」第3幕からのものだったのですね。

2009年7月16日 (木)

高木綾子と仲間たち

2009年7月16日(木)午後2時開演 4時10分終演 @紀尾井ホール

アリオン・アフタヌーン・コンサート2009 2
高木綾子と仲間たち 

高木綾子(フルート) 長原幸太(ヴァイオリン)、菊地裕介(ピアノ)

A.ピアソラ    タンゴの歴史
            ボーデル1900、 カフェ1930、ナイトクラブ1960
C.ドビュッシー  シランクス(パンの唄)
C.ライネッケ   フルート・ソナタ ホ短調「オンディーヌ(水の精)」

J.イベール    2つの小品
W.B.モリーク  フルートとヴァイオリンのためのコンチェルタント
B.マルティヌー  フルト、ヴァイオリンとピアノのためのソナタ

村松崇継      EARTH (フルート&ピアノ)
モンティ       チャールダッシュ(フルート&ヴァイオリン&ピアノ)

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改めて、高木さんのフルートの音色の力強さ、確かさに感服しました。
若い3人が、とっても楽しげにアンサンブルしている姿を、
見て、聴いて、感じて、たいへんすがすがしい気分になりました。

印象深かったのは、
★W.B.モリーク  フルートとヴァイオリンのためのコンチェルタント

不勉強ゆえ、初めて名前を聴く作曲家でしたが、
19世紀ドイツで活躍したヴァイオリン奏者、作曲家のウィルヘルム・ベルンハルト・モリーク(1802-69)とのこと。
ヴァイオリンとフルートだけ、という演奏携帯は珍しいのではないかと思いますが、
古典的な聴きやすい旋律で、この二つの楽器の華やかな絡みあいは、大変聴き応えのあるものでした。
二人の楽器の歌わせ方、息の合わせ方、おみごとでした。

また、アンコールの2曲も楽しいものでした。
最後のチャールダッシュは、おそらくピアノニスト菊地氏の編曲によるもの。
3人の演奏家の技巧、音楽性を惜しみなく表現する、
最後を飾るにふさわしい編曲で、
演奏後の菊地氏の満面の笑みが印象的でした。

ものすごい炎天下の昼下がり、ゼイゼイ言いながら足を運んだコンサート。
でも、帰りには、気分も足取りも軽くなっていたのでした。

2009年7月11日 (土)

『今日の風、なに色?』

090712book 話題の人、
ピアニスト辻井伸行氏の母上が書かれた本です。

1960年生まれの元アナウンサー。
そうか、、、20代のピアニストの母親が、私とほぼ同世代かあ。。
また、私の出身大学や、独身時代の勤務地に近い地名が多く出てきたりして、びっくりしました。

しかし!思ったとおり、並みの方ではございません。
彼女のバイタリティ、フットワーク、献身力……見事です。

決して「苦労話」としてではなく、「成功譚」としてでもなく、
迷いも素直に綴りながら書き進めて行く筆づかいに好感を覚えました。
「障害者だから障害者らしく」、社会に適応させるためのレールに載せる、
そういった教育を避け、
「伸行だから伸行らしく」を目指して、その背中にフォローの風を吹かせてあげる
(pp.67-68)

……言うは易く、行うは難し!そのものだと思います。
その信念を貫く見事さに感服です。

それにしても……天才と呼ばれる人の影には、立派な母あり、ですね。

2009年7月 2日 (木)

青柳晋リサイタル

2009年6月29日(月)11:30開演 13:20終演
浜離宮ランチライムコンサート Vol.65

青柳晋ピアノリサイタル

モーツァルト   幻想曲 ニ短調 K397
ショパン     ノクターン 第7番 嬰ハ短調 Op.27-1
          ノクターン 第8番 嬰ハ短調 Op.27-2
          練習曲 作品25-10 ロ短調
          練習曲 作品25-11  イ短調 《木枯らし》
          練習曲 作品25-12  ハ短調 《大洋》

リスト          オーベルマンの谷
             ラ・カンパネラ
             愛の夢 第3番
ワーグナー=リスト  楽劇 《トリスタンとイゾルデ》から
               《イゾルデの愛の死》S.447
リスト         ハンガリー狂詩曲 第2番

メンデルスゾーン 《無言歌集》より デュエット
リスト         ハンガリー狂詩曲 第1番

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主催者側からの要請ということで「演奏者からのひとこと」がつくのですが、
1曲目モーツァルトの演奏後、このトークのなかで

「1年に1度ぐらい、自分で”よくやった!”と言える演奏ができる。
ピアノの向こうの雲の隙間から光が射し、そこから作曲者の顔が見えてきて、
その光の中で演奏しているような感覚。
一種のトランス状態といえるのでは。。。」

といった話がありました。

この日のプログラム最後、リストのハンガリー狂詩曲第2番、
そしてアンコールは
この最高の状態に到達していたのでは?と思います。

聴き手も巻き込み、会場全体がトランス状態になっていた感あり。
すごい瞬間に立ち会った!という気がします。

どういう風にすごいかをここで書き表すのはとっても難しいのですが、
「弾いている」のではなくて、
ピアノが自らの意志で奏でているような。。。
弾き手は、ピアノに向かって楽しげに指揮をしているような。。。
実際、そのような姿にも見えたのです。

テクニックとか、音質とか、音量とか、そういう要素はぶっとんでしまって、
音楽全体として、素晴らしいものが流れ出てきていて、
それにみんなで酔いしれていた、という感覚です。

実は、5月の「ピアノ誕生300年記念コンサート」で聴いた青柳氏の演奏に
惹かれるものを感じて購入したチケットでしたが、正解でした!

仕事前の時間に、かなり無理をして聴きにいった価値がありました。

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