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2008年10月10日 (金)

平野啓一郎『決壊』

081010kekkai 今年6月の刊行以来、話題となっていたこの本、
図書館の予約で2ヶ月以上待ち、やっと届きました。

連続殺人事件をテーマとするミステリー

でも、ミステリーと呼ぶには、あまりに重く暗く、
なるほど、芥川賞作家の王道を行くと、こうなるのですね
という感想を抱いてしまうような筆の運びです。

分厚い上下2冊、三晩で読みきりました。
熟読はしていません。斜め読みに近いです。
けれど、その内容の重さ、暗さゆえ、もう一度読み返そうとは思えません。
熟読により見えてくるものは大きいだろうな、という予感はありますが。

弟殺しの容疑者とされてしまう、インテリの兄(作者自身の投影も?)の語り、
そこここに、読者に「!!」と思わせるフレーズが。
そして、その父、母、義妹、叔父、といった親族のふるまい、
それぞれうまく造型されているだけに(読者に媚びるサービスは皆無です)、
やりきれなさが体に沈み込んでいく感覚があります。

信頼って何だろう?
意図を伝えるって、どういうことだろう?

夫の作った秘密のホームページを発見し、書き込みをするようになった妻が、
そのハンドルネームでの交流と、実際の妻としての交流とのギャップに気づき、
思い余って義兄にメールするようになり、夫から二人の関係を怪しまれる結果に。
その後、夫のホームページ現れた新たな常連を義兄だと思い込んだ彼女は、
夫を殺害したのも義兄だと思い込み……

最愛の弟を殺された被害者でありながら、弟の妻から疑われ、
母親やつきあっている女性達からも
「何を考えているのかよくわからない」人間として距離を置かれているインテリ男性。
彼自身としては、接する相手にあわせて自分をカスタマイズするのは自然な行動であり、
それだけに、誰とでも素直に自分をさらけだしてつきあう弟は何よりも大切な人間だったという。
けれど、その弟が実際の悩みを吐露する相手は家族ではなく、ネット上で……

ネット社会、
コミュニケーションの脆さ、危うさに、戦慄を覚えます。

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