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2008年8月 4日 (月)

『望郷のマズルカ』

080803zhufon
森岡 葉
望郷のマズルカ 
激動の中国現代史を生きたピアニスト フー・ツォン』

フー・ツォン
1955年のショパンコンクール3位の中国人ピアニスト

この本を読むまで、彼のことは全く知りませんでした。
フランス文学者である父の生い立ちから筆を起こし、
その父が彼に送った手紙を紹介しつつ、
中国の社会変化の中で、この父子がどう生きたかを書いた本です。

まず、中国現代史について無知だったなあ、と感じ入りました。
文化大革命って、本当に狂気の時代だったのですね。
当時の音楽界を支えていた才能ある人々が、続々と拷問を受け自殺を遂げていたなんて。

また、「教養」が人生に与える深さにも目を見開かされる想いでした。
父の厳しい教育を受け、中国古典文学に深い造詣のあるフー・ツォンは、
音楽のなかに中国古典につながる精神性を感じ取るのだそうです。
たとえば
ショパンの音楽には、李後主という詩人~生死の痛み、民族の悲しみ~を、
ドビュッシーの音楽には「無我の境地」を、
シューベルトには、陶淵明という漢詩人~文人の伝統的な人生に対する感慨~を。

彼のショパンの演奏は、ヘルマン・ヘッセをして
「まさに奇跡だ」
と言わせるほどで、ショパンコンクールでは、マズルカ賞までも受賞しています。
このことについて、父は

「自己の民族の優秀な伝統精神を理解し、自己の民族の魂を持ってこそ、異なる民族の優秀な伝統を徹底的に理解し、その精神に深く入ることができるのです」

と語ったそうですが、なんとまあ深い言葉でありましょうか!

フー・ツォン(1934年生まれ)、今も存命でイギリスに在住し、1年のうち半分は中国で若者の指導にあたっているそうです。
彼の演奏CDもこの本についていましたが、ほんと、特にショパンの演奏は素晴らしい!

図書館で借りたのですが、自分で買って手元に置いておきたいと思う本です。

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コメント

読んでみたい!!
ロシアからの亡命芸術家も多いですが、ラフマニノフもそうだったのですね
映画『ラフマニノフ』を観て、初めて知りました

文化、芸術やスポーツが政治的弾圧を受けるのは堪らない気がしますが
でも、そんなの、生命の安全を保証され、その上に様々な自由を国家から保障されているからこそ言えること・・・なんですよね

今でも、アフリカ大陸には、どれだけの才能ある卵が、命一つを守るために逃げ惑い、あるいは、今、この一瞬に命を落としているかもしれない・・・・
アタシ達は、何ができるわけでなくても、世界の『歴史』と『現状』とを知り、”なすすべもない無力な自分”を引き受けた上で、自分たちの幸せが何の上に成り立っているのかにシッカリと目を向け、感謝を忘れず、生かされてある命を、自分にある限りのチカラを、活かさなきゃならない・・・のでしょうね

読まれたのですねっ!
私は友人が著者の森岡氏と交友があり、そのご縁でこの本を紹介してもらい、読む機会を得ました。
私も、ショックに近い感想を抱いたのですが、まだなかなかレビューが書けずにいます。
ほんと一人でも多くの方に読んでいただきたい本です。

>華音さん

ほんとに「平和ぼけ」してはいけない、と思います。
現在のアフリカにしろ、文化大革命にしろ、
「大変な時代だよね」とうわっつらだけの一般論として認識することと、
こういう本を読んで、自分の身に、価値観にひきつけて実感することとでは、
大きな差があるものだ、と思いました。

>ようこさん

実は私、この本を知ったのはようこさんのブログを通してなのです。
感謝!
近所の図書館が所蔵していたので、すぐに借りて、あっという間に読んでしまいました。
そして今、私の手元には、この本の参考資料ともなった
『君よ弦外の音を聴け-ピアニストの息子に宛てた父の手紙-』
があります。
読み終えたら、またレビューを書きますね。

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