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2008年7月13日 (日)

「家庭教育」の隘路

本田由紀著
「家庭教育」の隘路 ~子育てに強迫される母親たち~

本田由紀氏といえば、ニート論、就職氷河期の若者論などで活躍中の
新進気鋭の社会学者、東大大学院の先生ですが、
彼女が二人の子の母親で、私とほぼ同世代とは知りませんでした。

この本、小学生の母親たちへの筆者自身によるインタビュー記録と
内閣府実施の「青少年の社会的自立に関する意識調査」
(H17・青少年調査とその保護者調査からなる)とを分析したものです。

その分析の意図は、
1990年代後半以降の「家庭教育」の重要性を声高に語る風潮が、
実は「家庭教育」の主たる担い手である母親たちを追い詰め、
社会にとっても望ましくない結果をもたらしかねない
という恐れをあぶりだしたい、と言う点にあります。

その結果には共感できます。

1)子育て観の差は、アメリカでは、ミドルクラス vs 労働者階級・貧困層
という対立軸で語られるが、
日本では、こうした二項対立ではなく、差異はグラデーション的に表れる。

2)子どもが小学生のころの育て方を見ると、社会階層の高い家庭ほど
「きっちり(勉強や生活習慣を厳格に)」
「のびのび(遊びや体験、希望や意見の表明を重視)」
の両者を追求しようとする傾向が見える

3)「きっちり」子育ては、中学3年時の成績に優位に働きかけ、
その中学3年時の成績は、最終学歴に大きく影響する一方、
子どもが離学後、無業者にならないことに優位に働きかけ、
若者へと成長した子どもの「満足度」が高いのは「のびのび」子育てのほうである

つまり、子どもの学歴を高めたいなら「きっちり」子育てを!
無業者にならず、満足した生き方をさせたいなら「のびのび」子育てを!
ということですね。

本田氏は、
「きっちり」「のびのび」という二つの要素が母親にとって「葛藤」を逃れがたくしている
と指摘し、
「母親はいずれかの側面に力を入れているときには他方が損なわれているのではないかという不安を感じ、常にそのバランスや配分が適切であるのかどうかについて苛まれることになる」
「母親をそうしたジレンマから救い、自分自身の目標に向けての活動にエネルギーや時間を割くことができるようにするためには、やなり子育てと言う課題を母親に委ねるのではなく、社会で広く担ってゆくことが望まれる」

と述べています。

小学校の子育てを終えたところの一母親としての私の実感に沿う部分の
大きい結果だといえます。
ほんと、「きっちり」すべきか、「のびのび」すべきか、というのは永遠の課題です。
夫の実家、私の実家を例にあげれば
一方には「きっちりしすぎ!それでは子どもが萎縮する!」と言われ、
他方には「のびのびしすぎ!しつけがなってない!」と叱られ、、、ふう。。。

本田氏は「家庭教育」が政策的・社会的に強調される昨今の動向について、
次のように結論づけています。

・高階層の母親は敏感に反応し、これまで以上にさまざまな努力を払い始めるだろう。

・ライフコース選択において、いったん子どもを持った母親はさまざまな母親役割に責任を果たそうとし、母親自身の自己実現や社会進出との間の葛藤が深まるだろう。

・その結果、社会格差がさらに広まるばかりでなく、子どものために就労を犠牲にするという選択を助長し、少子化対策や男女共同参画社会の実現にとって大きな障害となるだろう。

私が漠然と感じてきたこと、周囲に愚痴ってきたことを
よくぞ学問的に、明確に、示してくださいました!といった気分です。はい。
しかし、研究テーマと子育てとをしっかりと結びつけ、学者としてバッチリ活躍されている著者には敬服いたします、ほんと。

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